第1話

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0) 驚くほど趣味があう親友がいる。 茶目っ気たっぷりの彼女がいる。抜群に優等生とまではいかないが、勉強もスポーツも頑張った。少し歳の離れた妹が居て、オタクで生意気だけど、困った時にはすぐに俺の部屋に来るのが凄く可愛い。母さんの料理は何でも美味いけど、鳥のあんかけがピカイチ。後、おだてに弱い。親父は…仕事で忙しいとか言いながらも、わりと受験に積極的。本屋に行っては売れ筋の参考書を買って来る。 特に変わった事は無くて、強いていうなら何時もより眠いな…とかそれぐらいの事を考えて、翌朝の支度が終わるなり眠った。そうして、俺は二度と起きる事が無かった。何の疑いもなく、明日が来ると信じて。明日の用意までして。死んだのだ。言い方こそ酷いが「ぽっくり」という表現そのままの最期であった。 何時だったか考えた事がある。死後の世界ってやつを。そう、あれはちょうど四年前だったか。中学で流行り出したラノベ(ライトノベル)を貪り読んで、すっかり厨二病になっていた中二の頃の話だ。ラノベってのはとかく死後の世界観的なものが多い。死んだ筈が死ねないだとか、異世界に行っただとか、同じ人生やり直しだとか、幽霊になってフラフラなんてものもある。バリエーションは様々だが、ようは二択だ。リスタートか、消滅。どちらが良いだろうなんて、取り止めのないことを随分真剣に考えた。結局、毎回辿り着くのは輪廻転生を肯定する自分で。単に、「死んだら消滅」なんていう死生観だとあまりに死が恐ろしくなるからというチキン丸出しな思考ではあったが、親友の雅(みやび)も同じ考えだって苦笑するもんだから、酷く安堵したんだっけか…。 で。死んだ今、答えあわせのお時間である。結論から言えば、俺は生まれ変わった。異世界とかではなく、ごく普通の日本語が通じる、ごく普通の日本に。ただ、一つ身を割くような現実を除いては。
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