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僕は、間違ったんだろうか。
一瞬しか見えなかったアゲハの顔が、泣きそうな表情が、瞼に焼きついてしまっている。
――かいとといっしょにいたいのに。
あれは、あの言葉は……。
「大久保君、お客様」
「え?…あ、はい!」
しまった。
バイト中なのに、またぼーっとしてしまってた。しかも、数日前と全く同じ注意を、同じく田所さんにされてしまった。
慌ててレジに目を向けると、そこには少し腰の曲がった身綺麗なおばあちゃんが、すでにお金を準備して待っていた。
常連のお客様だ。
「お待たせ致しました。いらっしゃいませ。……ブレンドのホッとでよろしいでしょうか?」
「えぇ。ブレンドをお願い」
僕は田所さんにブレンドのホッと――ブレンドはMサイズしかない――を伝えると、レジを叩いておつりをお客様に返した。
このお客様に続いて何人かのお客様を途切れなく接客したあと、またも田所さんに同じことを言われてしまった。
「どうした?体調悪いか?」
「あ、いえ。別に体調が悪いわけでは……」
「んー。でも、休憩行くか?少し早いけど」
曖昧な返事をしているうちに、スタッフルームに押し込まれてしまった。
少しでも時間があると、昨日のことが頭を占拠する。
だから、一切の余裕もないくらい忙しければ、何も考えずに済んで、きっと今よりはましな仕事ができるんだろうけど…。
残念ながら、うちの店はそこまで忙しくはない……。
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