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リーツイの歌を聞いてから少し考えることがあった。 多分その前からかもしれない。 歌は国境を超える、そんな綺麗事を信じていたわけではない。 それでも、実際に異国で日本の歌を聴いたときの嬉しさは確かにあった。 愛国心ではないかもしれない。 たまたま日本で生まれた歌と人間が、違う土地で会えたことが嬉しかった。 「私、歌おうかと思うんです」 晴美姉さんと恵ちゃんに言った。 次の集まりでカラオケが、あるかどうかわからないけど。アカペラでもいい。 何か中国語で、無理なら日本語で。 今から練習したい、と。 「ほう、雪音はそういうのしないのかと思ってた」 「元々、歌しか取り柄がないんですよ私」 「日本語学科の子なら、結構日本の曲も知ってるよ。相談してみたら。」 「この前聴いた、あの曲でもいいかなって」 『ごめんね、愛してる』というタイトルの曲 「それは止めとけ!ややこしくなるから!」 二人に止められた。 リーツイと午後に会った時に好きな歌を聞いてみた。 うーん、と考えている。 『あまり歌好きじゃない?』 『いや、そうでもないけど』 「教えるのが、どうしようかなって」 「あ、そうか。歌詞を読むのも下手だから聴かせてもらえたら助かる」 「持ってるのが、あまりなくて。かといって歌うのも」 『面倒かけるよね、無理か、ごめん』 『無理じゃない!』 「ちょっと、友だちの詳しいやつに相談してみるよ。」 『ありがとう!』 その夜、夕食を中国人食堂で食べようと誘われて。 リーツイと私、リーツイの友達の男子二人、女の子一人 五人でご飯を食べた。 リーツイと友だち二人は日本語学科、女の子は中国人で日本語は出来ないらしい。
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