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そんな風に未来への姿を心の中に映し出した時、吉成先生は、ロビー中央の時計に視線を移す。
「じゃあ……俺、行くよ。明日、朝一番で大阪に行かなくちゃならないんだ」
「仕事か?」
「うん、そうだよ。研修会に参加するんだ」
「……そうか、お前も忙しいな」
「俺さ、歯科医として今までよりも頑張ろうと思う。今日、しみじみそう思った。歯科医になろうと思った昔を思い出したよ」
吉成先生は、歯並びのいい真っ白な歯をこぼれるように見せてから、歯科医を目指そうとした経緯をこう語った。
‘‘ いつも難しい顔をしていたお母さん。離婚してからは特に笑顔が消えた。でも、お父さんとの再婚が決まった時、
「新しい家族が出来る」と笑った時の笑顔が、忘れられなかった。
このお母さんの笑顔を守りたい……
そう思ったのが、歯科医を目指したきっかけだったと……”
「さっき、行く直前に見せた顔……
昔……あの時に見た笑顔よりもずっと嬉しそうだった。これからは、家族全員の笑顔を見ていきたいから。
……藍生もうちを掛かりつけにしなよ」
思い出すは、先ほど見たお母さんの泣き笑いの顔。くしゃくしゃに崩れた表情だったけれど……とても優しい顔をして藍生と吉成先生を見ていた。
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