ペンケース

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ペンケース

「井上さん、ちょっと放課後職員室に来てもらえる?」 「え、あ。ハイ。」 井上真琴(イノウエマコト) 高校2年 成績優秀、眼鏡をかけた今どき珍しいくらいのド真面目女の私。 もちろんそんな私はクラスのホームルーム委員。 身なりを整えて職員室に入ると自分を呼びだした担任のところへ行く。 「何ですか、滝波先生。」 滝波先生は一枚の書類を出して私の目を見つめた。 「2年に進級して井上の席の前の奴いつも出席してないだろ?」 「あ……。そうですね。」 伊藤龍之介(イトウリュウノスケ) 知っているのは名前だけ。2年になってクラス替えをして自分の前の席に人がいたことない。 いつも空席で唯一あるのは席の中のペンケース。 何でペンケースだけ?? 人物すら見たことないのに。 「このままだと、そいつ出席日数足りなくて卒業できなくなるからお前が教室へ連れ出してやってくれ。」 「…………は?」 「先生、見たことない人どうやって探せって言うんですか?」 「だからこの写真を見せてるんだろうが。」 そこには伊藤龍之介の証明写真と生徒手帳と書類 写真の第一印象は「喧嘩三昧。」って感じ。まあ勝手な私の自己分析もあるけど....。 茶髪に金のメッシュ 細く薄い眉毛に二重のくっきりした目。 鼻筋通った鼻に形の良い唇。 「………学校にきてないのにどうやって会うんですか?」 「え、あいつ来てるぞ?」 「はい??」 じゃあ、先生自分で説得しに行ってくださいよ。 と、言いたいところだがあえて口をつぐんだ。 「連れてきたら、成績アップ、 してやっても良いぞ。お前慶帝大の推薦欲しいんだろ?」 「え....。」 「ほ....欲しいです。」 「いいか、今頼んだ仕事はお前の進路にプラスの話だ。」 「....はい。分かりました。」 職員室を出てふうと息を吐く。 「伊藤龍之介.....。」 そう呟いて窓の外を見た。 まずは校内でいろんな人が来そうな場所から探そう....。 そう、例えば。 ガラガラガラガラ 「何、真琴あんた熱でも出したの??」
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