未来

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未来

「おっ、久しぶり。」 玄関の前に立つ俺を出迎えてくれたのは雅希だった。 「龍之介大きくなったな~。」 「お前とこの間会ってから俺の身長はたいして変わってねーよ。」 「そうだっけ?」 「…。」 おちゃめな返しにツッコむことさえできない今の俺は相当弱ってる。 「龍之介、目が死んでる。」 「…。」 死んでようが死んでなかろうがどうだっていい。 階段を上り迷わずASAKIとかかれたネームプレートがかかっている部屋のドアを勝手に開けた。 「おっ、結構早かったな。」 「まあ、ここからそう遠くはないとこから電話かけてたからな。」 崩れるようにベッドに腰掛けると、俺はようやく落ち着きを取り戻すことが出来た気がする。 「今日はひとまず寝れば?」 俺に何が起こったのかまるでコイツは知ってるみたいに言った。 「…わりー、さんきゅ。」 難しくて面倒くさそうなことは考えたくなかった。 重い瞼を閉じると、無性に寂しくなる。 寝るときってこんなに辛くて嫌な気持ちになんのか…。 眠ろうと頑張るたびに瞼の裏側には思い出がフラッシュバックする。 どうしたらいいのか分かんなくて、耐えられず起きあがった。 「眠れねーの?」 何かの参考書を読みながら聞いてきた朝希に俺は簡単に相づちをうつ。 不安と恐怖と後悔と…いろんな念が心を真っ暗にしていく。 「何があったわけ?」 朝希の口調はあまりにも優しかった。 今にも流れそうな涙を我慢して、俺は口を開いた。 「別れたんだ。」 俺と朝希の間で少しの沈黙が走るとまるで何も動揺せずになんで?と聞き返された。 「理由が…よく、分かんなくて…。」 あまりにも、別れを決定づけるような理由がないことに今なんとなく気づいた。 …理由…? そう聞かれたら何て答えたらいいか分かんない。 「まともな理由も聞かなかったのか?」 呆れられたような口調でそう言われて、申し訳なさそうに頷く。
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