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「なんか、嫌なことでも思い出した?」
嫌なことなんて今、何一つ思い出してなんかない。
龍之介を思い出すときはいつも、楽しかったこととか、どんな奴だったとかそんなことばかり思い出してしまう。
今は、睦月君の影に龍之介を重ねて思い出してた。
なんてことしてんだろ。
「そんなに嫌なことを思い出してそうな顔してた?」
睦月君は、少し考えているような表情の後、口を開いた。
「いや、懐かしそうだった。」
「じゃあ、何で嫌そうなんていったのよ。」
「いや、ただなんとなく。」
グッと口角を上げて睦月君はそう言いながら笑った。
その癖、やめてほしい。なんてたってものすごく似ているから。
テーブルの上に出された朝ご飯は、少し少なめのあさりのパスタだった。
「.......なんか美味しそう。」
「だろ?見た目だけじゃないぜ?早く食べてみろよ。」
早く食べろと催促されて、あさりのパスタを口に運んだ。
まったく、もう少しゆっくり食べさせてはくれないものな「美味しいっ!!!」
つい、あまりの美味しさに心打たれ言葉の途中で美味しいが口から出てきた。
「あんた!いつでも婿に行けるよ!」
「......俺は婿養子にはなりません......。」
「あそ、女に生まれてくれば良かったね。」
「はは、それ褒めてんの?ありがとー。」
パスタを残さず最後まで頬張って、手を合わせる。
「御馳走様。」
いや、本当においしかった。こんなに美味しいパスタ食べたことないってくらい大げさに評価してあげたいくらいだ。
「お店出せば?」
「あくまでも趣味だからな。」
食器を片付けながら睦月君は言った。
「本当においしかった、ありがとう。」
「また、作ってやるよ。」
その言葉に少しドキッとしたのは本人には内緒。
「俺、今日は午後講義なんだ。」
「私は今日は大学には行かない。」
「そう、俺一回帰宅するわ。服変えなきゃだし。」
食器を手際よい綺麗に洗って、顔をあげた。
.......あなたはお母さんですか?(笑)
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