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「迷惑をかけてすまない」
ぺこり。と彼は深々と頭を下げた。
予想していなかった彼の行動に、私は咄嗟に言葉が出てこなかった。
何を言うべきかと口をぱくぱくさせている間に、彼はデスクに手を着いて体重をかけた。
そして、斜め上を向いて息を吐く。
煙草の煙を吐くかのように、長く、深く。
「よし、やるか」
最後の決意を固めたらしい。
彼は再びパソコンと向かい合った。
もう私も覚悟を決めている。
やりきる。
自分に与えられた仕事を。
私がぎゅっと目を瞑って自分に言い聞かせた直後、彼はついにエンターキーを押したのだった。
──ごめんなさい。
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