選抜(セレクション)

90/90
3612人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
「ただモンじゃねえとは思ってたが、どうやら兄ちゃんは俺が思ってた以上にとんでもねえ奴らしいな。流石に五輝星第三位とタメ張るなんて言われてるだけはあるってことか」 「なんだ、若者ウケ悪そうな店の割に学園の内情もある程度しっかり把握してるのか」 衆人環視の中あれだけ派手にやり合えば当然話のネタにくらいは上がるとは思っていたが、よもやもう学園の外にまでその話が浸透しているとは思わず、素で驚いてしまう。 学生が来るような店ではないと思うのでおそらく外でも情報収集をしているのだろうが、口ぶりから察するにそこそこの確度で実情を把握していそうなので、思ったより彼は情報屋として優秀なのかもしれない。 「若者ウケ悪そうは余計だろ……これでもちょっとは気にしてるんだぞ」 「俺は結構こういう落ち着いた雰囲気好きだけどな。コーヒーもスイーツも美味いし。マスターが厳ついのと隙あらば情報抜こうとしてくるのが玉に瑕だけど」 「落として上げてまた落とすの、情緒がおかしくなるからやめてもらえねえかな? 悪かったよ、コイツは詫び代だ」 アリスがアップルパイとコーヒーを片付けたタイミングを見計らって空いた食器を回収すると、マスターは小ぶりなカップケーキとコーヒーのお代わりを二人分差し出してくる。 カップケーキには角切りされた林檎の果肉が所々から覗いており、どうやらこれも奥さん手製の林檎を使用したものらしい。 「うん、美味いな。これだけのものをタダで貰うのもアレだし、一人分くらいの情報は落としていこうか。 そうだな……今年の選抜戦は一年生が台風の目になるかもな。おそらく三人は一年生から代表が出るはずだ。」 「それはまた大きく出たな。兄ちゃんの見たてではそこに勇者様ご一行は入ってないんだろう? 今年は随分荒れそうじゃないか」 「これ以上は別料金だ。ただまあ、どうしてもってんなら学園の秘書課に連絡してもらえれば選抜戦の観覧チケットくらいは用意するから自分の目で確かめてくれ」
/328ページ

最初のコメントを投稿しよう!