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「なんか……本当に俺がこんな装備を買っていいのか不安になってきた……」
ネットゲーム初心者なのにどういう訳か伝説級の装備を手に入れようとしているなど、ログインしたほんの数時間前には微塵も思っていなかった。
なんだか他のプレイヤーが必死にレベルを上げて己を鍛えているのに、一足飛びでそれらを踏み越え装備で更にそれらに差をつけるということにどうしても気後れしてしまう。
他のプレイヤー達からしたら「何を贅沢を言うか」と言った感じだろうが、なまじ突出したステータスを持っても困ることが多いということをこの短いプレイ時間の間で学んだ。
「いいじゃない。使えるものは使えば。
こういうゲームでは私の剣やライト君の装備みたいなユニーク品は凄く貴重で、奪い合いの対象なの。
ボスモンスターのLA(ラストアタック)ボーナスを取るために今まで一緒に戦っていた仲間を背後から攻撃したり、クエストの納品アイテムを独り占めするために他のプレイヤーにモンスターをけしかける……所謂MPKを仕掛けたり。
そんな奪い合いが常の世界で、こうしていい装備が纏めて手に入る機会っていうのはまず無いことなんだよ?
それは紛れも無くライト君の運が良かったからで、君にはこの装備達を受け取る正当な権利があると私は思うな。」
ルナは柔らかく微笑むと、「それに、こんな雑多な物置に眠らされてるのも可哀想でしょ?」と付けたし言葉を締めくくった。
「確かに…それもそうだな。
せっかくだし、マリアさんの厚意に甘えさせて貰おうか」
そう言って俺は白銀の十字架に右手の人差し指をチョンと触れさせる。
すると、その剣の上に金額と購入するか否かを問うメッセージが表示されたホロパネルが浮かび上がる。
そして迷わずに購入ボタンをタップすると、テーブルに上の剣はふっと姿を消した。恐らくアイテムストレージに入ったのであろう。
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