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どうしたら彼女と仲良くなれるのだろうか?
夕闇がまだ浅い水底のような青みを残している頃。
吹き荒れる風が校門前に咲く桜を一片ずつ散らしてゆくその姿を横目で見ながら僕は女の子と対面し、悩み続けていた。
現状を打開する術を知らない僕には沈黙が続く教室の一角で悩む事しか出来ないのだ。
何を言えばいいんだ。目の前で静かに座り、じっとこちらを見つめる彼女とどうしたら会話が弾むんだ?
饒舌でなく話題提供者でもない僕にとって、向かい合うようにして座っている女の子と会話を弾ませる事など不可能に近い。
目の前の彼女が話題提供者として立候補してくれたら苦労しないのだが、話題がないとかそれ以前に何一つ話してくれない。無口な少女なのか、それとも人見知りが強く緊張して何も話せないのか。どちらにせよ沈黙は続くばかり。
非常に困った状況だ。
今この場を明るく出来る誰かに助けを呼ぼうにも教室には僕と彼女しかいない。これは一体どういう事だ。
気を利かせて二人きりにさせてくれたのか、部活動に忙しいのか、はたまた僕と彼女に関わりたくないのか、放課後になると急いで帰宅準備をし、教室を出て行った同級生の面々には後で一つ文句でも言いたいぐらいだ。
現状、お見合いをしている状況に近いが、とてもだが笑えるような幸せな雰囲気ではなく、互いの距離は遠ざかっていくようにも感じる。
もうあれから三十分程経つが、そこには気まずさだけがあるだけだった。
もう少し彼女の事について知っていれば会話が弾むだろうに、とふと思う。
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