プロローグ

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0-5  ふと、私室のほうを見ると、ティオが一冊の本をひらいていた。  見覚えのある装丁。  イグノトルは勢いティオに近づき、本を取り上げた。 「あっ……」  これは以前、妻が初代ティオを預かる心得のために買ってきた本だった。  見ると、ティオを出迎えよう、の項には初めて出会う天使におびえないよう、服装は白っぽく奇抜でないものを、と書かれてあり、余白に丸印がされていた。 「君が見るものじゃない。こんなところに紛れてたなんて知らなかったよ。……ごめん」 「それ……、あなたが、亡くしたティオのために準備をしていた……の?」 「妻の愛読書だった」 「そ、……そっか。あなたの奥さん、あなたの気持ち、すごくよく知ってて、色々してくれてたんだね」 「いや、私は初代ティオを預かるつもりはなかった。当時は外科医をしてて、緊急だと寝てても呼び出されるから病院に泊まりこむこともあってね、私がいない間、寂しいから妻が預かりたいって言い出したんだよ。どうせ屋敷にいても暇だろうし、初代ティオを育てるのは天使にとって名誉なことだから、そのくらいは協力しろ、って思ってた」 「今と、ぜんぜんちがう」
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