始まりの赤

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学校から帰った俺を待ち受けていたのは、片目が空洞になった兄の悲惨な姿だった。 「兄、さん・・・?兄さんっ!!返事をしてくれ兄さん!!」 何で、何で俺の家族がこんなことに・・・!? 「何故だぁぁあああああ!!!」 どうして、何で。 その疑問だけが俺の脳内を埋め尽くす。解の無い問題が思考を貪り吐き気を催す。 知りたいか? 突然の声に少し驚いたが、空耳で無いと直感して平静を保とうと長く息を吐く。 脳内に直接話し掛けてくる存在が、近くにいるはずだ。 「ッ誰だ!姿を見せろ!」 知りたいか? 声の主は、それしか問わない。 「まさか貴様、犯人か!!」 それは違う。だが、事情は知っている。 ・・・疑わしきは罰す。 そうか。ならば、そちらに降りようではないか。 「・・・降りる?まるで意味がわからんぞ!」 そう叫んだ後に突然人が現れた。 「やっぱこの世界は居心地が悪いな」 煙草に似てない煙の臭いが鼻に付いたが、今は気にしてはいられない。 「・・・・・・お前が先ほどの声の主か」 そして一瞬で理解し、肝を冷やした。こいつはきっと人じゃないと。神経を逆撫でしたら一瞬で殺される、と。 理解した瞬間に身体は一歩退いていた。 「んー、わかる?でさ、俺はお前の兄貴に会ってるんだけど」 特に気にしてもいない様子の目の前の男が、いきなり妙なことを言い出した。 「兄さんと、だと?」 こんな友人は兄の口から聞いたことがない。いや、友人ではないか。 「そうそう、よくわかってるじゃないか」 余裕の笑みを浮かべて俺を見るそいつの雰囲気は、少々楽しそうだった。
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