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魔武器を介して頭の中に流れ込む情報。そこから組み立てられる勝利への道筋。
先程から拓也は防戦一方。体にはどんどん傷が増えていく。だが、着々と準備を進めていた。
「ハッハッハッ!!どうしたのだ鬼灯拓也ッ!!何を企んでいるのかは知らんがこのままではジリ貧だぞッ!!」
拓也はオーディンのその言葉に何も返さず、魔武器に送る魔力の量をさらに増やす。
流れ込む情報量は増え、しかし同時に脳に負担がかかり激しい頭痛が拓也を襲った。
先程から鎧を破壊するためにこの作業を開始してからおよそ10分。
「ッ!!」
ー…もう少し、もう少しで解除式が完成する……ー
腹部を狙った突きを躱しきれず、左脇腹を大きく切り裂かれる。
痛みに顔を歪める拓也だが、それをすぐに押し殺すとまた作業に没頭し始めた。
あと少し、あと少し。そう自分に言い聞かせ、敵の攻撃を防ぎ、いなし、躱し続ける。
そしてその時は訪れた。
「出来たッ!!…ッグぁ!?」
がその達成感が隙を作り出してしまう。
歓喜する彼の胸のど真ん中に、魔剣グラムが深々と突き刺さった。それは拓也の体内を突き抜け、肩甲骨の間から切っ先が飛びだして輝く銀色が血の色を孕み、不気味に赤黒い光を放つ。
「流石のヌシも…これは効くだろう」
威圧するような声色でそう拓也に喋り掛けるオーディン。しかし次の瞬間彼は戦慄した。
「…つーかまぁえた」
まるで悪魔のように三日月形に裂ける口。溢れ出るヌルリとした殺気。
兜の隙間から見えるその黒い瞳を見て、オーディンは底の見えない深淵を見つめているような気分に陥り、思い切り後ろへ飛び退こうとするが…
「逃がさねぇよ…」
拓也が彼の右手を左手でガッシリと掴みそれを許さない。
そして拓也はゆっくりと彼の胸にのプレートに手を当てて、そっと呟いた。
「…解除」
刹那、粒子となって空気中に飛散した彼の鎧は、胸元にポッカリと大穴を開ける。しかしそんな苦労をして開けた穴も、まるで生き物のように蠢き、すぐに縮んで行く。
が、拓也はすかさず穴が塞ぎ切る前に、そこに手を突っ込んだ。
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