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「拓也さんは先程から、培った知識と技術で着々とダメージを与えていますが……恐らく状況は、拓也さんが不利でしょう」
彼をよく知る者のその分析。
先程は威勢よくモノを言ったメルも、悔しさから歯を噛みしめる。
ジェシカは信じられないという表情で膝を折って頭を抱え、あの表情が変わらないことで有名なアルスでさえ、悔しそうに顔を歪めた。
セリーは姉であるリリーに縋り付き、ビリーは座り込む。
帝一同も目を伏せて、なにも口にしようとしない。
「拓也さんは……そう簡単に死んだりしません」
しかし、その中で唯一。ミシェルだけが力強くそう言った。
驚いたように彼女に視線を向ける一同。
彼女のその蒼い瞳には力強い光が宿る。
「私は……信じています。………だって…拓也さん、とっても強いんですから」
だがその光も一瞬だけしか持続はしなかった。その目は涙が浮かび、口元は震え、拳は強く握られる。
仕方ない。彼女がこの中で誰よりも彼を想い、そして心配しているのだから。
しかし、信じたい。死んで欲しくない。そんな願望ともいえる彼女の想いは、一同の暗い雰囲気を消し去った。
「そうよ、アレがそう簡単に死ぬわけがないわ」
軽く毒をはくように口を開いたのはリリー。自分に縋り付くセリーの頭を撫でながら、軽く笑みを浮かべてそう言った。
するとそれをきっかけに、まわりにも穏やかな空気が戻る。
「そうだね。拓也はしぶといから大丈夫だろう」
「そうだよそうだよ!たっくんはゴキブリ並にしぶといからね!!」
若干暴言のような気もするが、この際気にしてはいけないのだろう。
そんな光景を遠目から眺める大天使たちは、穏やかな笑みを浮かべて感傷に浸る。
「拓也さん。いい友達が出来たみたいですね」
「ちょっとラファエル。なぁに泣いてんの」
「……出来の悪い…息子を見守る………母の心境」
「ハハハ。それはいいですが、結界の手は緩めてはいけませんぞ」
こちらもこちらで結構呑気である。
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