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「はあぁあっ!」
息を詰め、苛烈な攻撃を浴びせにかかったのは、ロメニアと呼ばれる一族を纏める族長の、若き嫡子。
耳を深く覆う装束に隠れながらも、薄く輝く金の髪、そしてエメラルドグリーンの瞳は、彼が、紺碧の冠(ロメニア)たる証だった。
対するもう一方は、装束からはみ出した長い灰髪と、そこから覗く赤い瞳が特徴的な、中性的な人間だった。
鬼気迫るほどに整った顔立ちは、それ単体ではまるで人形とも錯覚するようなもので。
されど、あまり顔色を変えずに、この地で最強との呼び声高いロメニア、その族長の嫡子の斬撃をいなすのだから、ただの人斬りと言うわけではなかった。
ロメニアの少年――、次期族長たる彼、シャスタは、戦いの最中だというのに、密かに瞠目した。
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