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春一番の嵐の後は
柔らかい
そよ風が通り過ぎ
街道の桜の木々が芽吹き始める。
月曜日
階段を降りる彼の後ろ姿を見かけた。
髪、切って素敵になってた。
彼が恰好良く見えて
なんだか寂しくなって
ちょぴり嫌だなって思った。
長閑な午前中。
昼休みに会って
さっぱりしたね。
と 声を掛けたら
うん。切った。
と 彼。
…髪だって分かったんだ…
髪、切って来たから
と 彼。
いつも長いよね
と 私。
寒いから
と 彼。
あと一回切る。
と 彼。
ふーん。
と 私。
もっと切る。耳が見えるくらい切る。
と 彼。
…耳、今も見えてる…
私は首を少し左に傾げながら
髪を切って見える様になった彼の耳をじっと見てた。
今も見えてるけど
と 照れながら彼がくすぐったそうに右耳を触った。
うん、見えてるね
と 私は言った。
彼を可愛いと思った。
彼と私の間に
暖かい陽射しを感じた。
キュンっと
花が咲いた音がした。
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