不透明な矢印と嘘の意味

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ピロンッ ロック画面に表示された通知メッセージに一瞬、期待が膨らむけれど。 玲: 早く帰りたいー 鈴: お疲れ様です!今着きました いつもの内容に、肩透かしをくらった気分にもならない。 びっくりマークがつくようになったくらいで、業務用連絡かと問い詰めたくなる文面は以前とさほど変わらないし、メール電話不精で近代人と感覚がズレているのもよくよく解っているけれども、だ。 付き合いたてのカップルは、これが普通なのだろうか。 『早く会いたい』 『寂しい』 少なくとも今までの経験上、みんな口を揃えてそう言っていた。 人それぞれ、許容の期間が違うかもしれない。 だけど彼女の口からそれらを聞いたことは今一度ないし、俺みたく一ヶ月も会えない現状に嘆くなることもない。 単に、淡白なのか。 それとも、俺が歪なまでに執拗なだけなのか。 会えている時は、特に気にすることもなかったけれど。 最近はその一点に、違和感を覚えるばかりだ。
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