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それから。
それから大輔が最下荘に戻ると、住人それぞれからそれぞれの歓迎を受けた。
普通のものもあった。
けれど、過激なものもあった。
というか、大半が過激だった。
でも、それがなんとなく嬉しかったりする。
迎え入れてくれることが、単純に嬉しい。
この前の変わらず接してくれているところが、嬉しい。
居場所があることが嬉しい。
席に座る。いつも通りの席。いつも座っている席。見慣れた順番で座る住人。変わらぬ日常。
変わることのない、日常。
変えることのない、日常。
それが、少し…………。
大輔はそっと視線を動かす。
幽霊に、視線を合わせる。
二人目の幽霊。
万人に見えるものではない、幽霊を。
気づいてしまったからには、戻れない。知ってしまったからには引き戻せない。
知ってしまったことは、もう忘れることはできない。忘れるという選択を取りたくない。
自分がしてしまった過ち。それを全て背負い込むことはないのだろう。でも、過去のこととして捨てていくこともできない。
時間は戻せない。
過ごせなかった時間は取り返せない。
前を向くしかない。
そして、それからどうするかは、自分で決めなくてはならない。
そのために、戻ってきたのだから。
最下荘。そして、その住人。
向き合わなくてはならない。
本当の意味で。
理解しなくてはならない。
もっと深く。
もっともっと、深く。
ーーーendーーー
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