第14章

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 どうしてこのタイミング何だろうって思う。課長の家を飛び出したあの日が、一瞬でフラッシュバックした。  何か話さないといけないと、真っ白になった頭で言葉を探しても何も浮かばない。課長も目を丸くしたまま固まったままだ。  思い切って口を開いた隙間にすっと入り込むように、課長の後ろから声がした。 「ごめんね、晶ちょっと直談判してて遅くなった」  場違いな明るさを持った声が凍った空気を一変させ、課長の後ろから米澤さんが現れた。 「よ、よ、米澤さん」    あまりの救世主的な米澤さんの出現に、ふにゃふにゃになって崩れ落ちそうになる。私、今、思いっきりほっとしてしまった。 「アキラ…じゃない課長、こんなところで突っ立ってないでもう中に入ってよ」  米澤さんが邪魔そうに課長の背中を押した。 「...あ、ごめん」  課長の表情ががらりと変わり、いつもの笑顔になった。さっきまで気まずさがすっと無くなっていくのを感じた。  今は会社で仕事でプライベートを持ち込んではいけないんだ。  
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