九歩目 「繋がる」

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「……もしかして、彼女、とか?」 「!」 静かに訊ねられて、ビクッとした。 そう思うのならば、どうぞその手を離してください。 ……なんて言えるはずもなく、ひくっと口角を上げて視線を外す。 何だろう、この心もとない感じ。どうしてこんなにも嫌な感じがうごめくんだろう。 「……悪いけど今から帰るとこだから」 そこまで聞かれて、直くんがその腕を払った。チップのついた長い指先が名残惜しそうに揺らめく。 「行こう楓奈」 “彼女”とは答えず、彼女にはサヨナラも告げず、直くんが未練もなく背を向ける。 あたしの方がどうしていいか分からずに、そろそろと頭を下げた。 直くんと知り合って初めて、直くんが女の子に触れられているところを見た。 それも、とても馴れ馴れしく。 近しい距離で。
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