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結論だけいうと、生徒会室に裕弥はいなかった。
入り口で立ち止まり疑問符で思考を埋め尽くす。
なんか、会員が痛い奴を見るかのような目でこちらを見ている。
気まずい空気がこれ以上濃くなる前に、とりあえず裕弥がここに来たか聞いてみよう。
そう思い口を開いた瞬間だった。
「あいつなら、教室まで見送ってきた。邪魔だからどけ」
嫌な声が背後から響いた。
振り返って見るとそこには会計の中宮 真也が立っていた。
昔とうって変わって目の下はクマだらけ、痩せたようで顔色も悪い。その上髪は染めたらしく茶髪になっている本当別人のようだ。
変わってないものが口調くらいで、ある程度仲いい人じゃないとこいつがあの真也だなんてわからないだろうってくらいだ。
ずっと真也のことを避けていたから、高校生になってから会話したのはこれが初。
「わかった、ありがとな」
そう言ってできるだけ早く、真也から距離をとろうと足を教室へ動かす。
そして、背を向けた瞬間だった。
「あいつ、俺のこと誰か分からなかったのかな」
真也には似合わない弱々しい声が響いた。
「俺なんかが……」
さらに、何か言葉を紡ぐ真也の声をチャイムの音がかき消してしまい聞き取れなかった。
真也へ視線を向けると、もう既に生徒会室の中に入ってしまっていて何を言ったのか聞きなおすことは出来そうになかった。
はーっと、ため息を大きく吐き出して今度こそ裕弥がいるはずの場所へ向かう。
何故か足取りが重たく感じた。
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