~彼女の想い~

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私の恋愛経験は残念な位乏しかったけど、そんな私だって、男女の間にうまれる「ほんのり甘い期待を含んだ空気」くらいは分かる。 そしてその空気を、二宮さんの左手が動いた時に私は感じていた。私もまた期待していたのかもしれない。 「手をつなぐ?」という言葉を。 彼の手のあたたかさを。 私達は並んで混み合う参道を歩いた。 目的の金魚すくいの屋台に行くまで、何度もお互いの手が触れた瞬間があったけど、それほどの距離を保ちながら私達が手を繋いで歩く事はとうとう最後まで無かった。 迷って、でもその手を差し出さなかった二宮さん。 期待して、でもその後を希望しなかった私。 伝えたい事があるのに上手く言葉に出来ないというのは、ここまでもどかしいものなんだと改めて思う。 見誤ってしまうのが嫌だから慎重になれば、ますます分からなくなってきて身動きが取れなくなり、言葉にするのが一層難しくなった。  
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