第1章

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 序   私は鞍馬山魔王尊と申す鬼神にて、皆さんの御存知の名で言えば毘沙門天と申します。近頃私の配下の者が止せば良いのにまた人間界に関わりを持ち、騒動を起こしました。人間どものやる事なら、何を起こそうと気にも止めぬのですが、配下の者がしたとあっては知らぬ振りも出来ません。ただ、私は古今東西の物ごとは手に取る様に分かるのですが、それに対し毛ほどの手出しをすることも出来ぬのでした。せいぜい事の次第を頭から皆様にご説明することくらいしか出来ません。と申しますのも、大陸の殷が滅びる時、周の太公望様が実力行使を以て取り決め、天界や仙界や魔界の者は人間界の者に関われなくなってしまったからなのです。懐かしい話ですが、因みにこの時私は、魔家四将の一人「魔礼海」と云う名で参戦しておりました。ですがこの辺境の地日本においては、あの封神縁起の盟約にも拘らず、天帝の眼を盗んでそうした者達がしばしば人間界に手を出しているのです。そこの所を御理解して頂いた上、以下の語りをお聞きになって頂きたく存じます。 第一巻 倒幕  悪天狗共の企ての縁 第一
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