言葉は時に人を傷つける。

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閉ざされていたゲートが開き、一台の救急車が入ってくる。 運転席から降りてくる、多分医療系の兵士。 「前線基地長の命令により、搬送してきましたっ! とは言っても寝ているだけのようですが・・・。」 少し困り顔だ。 後部ハッチが開き、ストレッチャーに乗せられたもげおさんが運ばれていく。 「ぐがー、ぐがー。」 緊張した面持ちで皆が見つめる中、響く高いびき。 がくりと肩の力が抜ける。本当に寝てるだけっぽい。 だがそこに付き従う、尚心配した面持ちのスノーさん。 そのままストレッチャーに付いていき、巨大テント内、医療スペースへと入っていく。 その間も握った手を離さないスノーさん。 「見たとこ寝てるだけなんじゃないっすか?そんな心配しなくっても・・・。」 ぴくりと震えるスノーさんの肩。 あ、やばい。ミカオ君またスノーさんの地雷踏んだかも。 「・・・本当は内緒にしとかなきゃならないんだけど、あなた達とは因縁があるから伝えておくわね。 この人が寝るってことは、死にかけてるってことだから。」 「は?だって、傷一つねえっすよ? 傷負ったってあっという間に治るし、最強無敵超人じゃねえっすか。」 あ、今気付いた。よく見るとスノーさんの手からなんかがもげおさんに流れ込んでる。 「・・・最強、ね。 たしかにミカオ君の言うとおり、パパは向こうの世界では最強だったわ。 莫大な魔力、それを行使できる肉体。 尚且つ魔力を再生する力も莫大だった。 いわゆる自然回復ね。 だけど、それはあくまでも向こうでの話。 こちらではそれが災いしているのよ。」 「どういうことだい?」 腕組みする弦子さん。 「莫大な魔力と言ったでしょ? ただ、パパは魔盲だから。 魔盲で人並みに、人並み以上に戦うには肉体強化を極めるしかない。 それも並大抵の強化ではなく、極短時間に全ての魔力を放出することで為せる、そんなレベルの強化。 あなた達も使えるわね。もっとも一番近いのはゆうすけさんのものだけど、限界突破、極限強化、ハイパーなんちゃらタイム・・・。呼び方は人それぞれだけど、それを使いこなして戦い続けた。 人が本来使える力の枠を遥かに超えて使いこなした。 この人の眠り、それはそれが原因なのよ。」
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