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わたしの声は届いているはずなのにいっくんは何も言わずずっと視線をそらしたままで。
「いっくん、教えて」
顔を覗き込むようにしてそう言うと、いっくんは大きく息を吐いた。
そして、ぽつりぽつりと話し始めた。
「昨日の奴……」
「昨日?」
「お前が一緒に帰っていった奴……アイツが、昨日桐子が『幼馴染み』と言っていた奴なんだろ?」
「……うん」
「桐子に別れを告げた前日に……アイツが俺んとこに来たんだよ」
「えっ……」
慶も同じ大学に通っているとはいえ、いっくんとは何も接点がないはずなのに、どうして?
なんて思いながら隣を見上げると、わたしの視線に気づいたのか、いっくんがその先を話し始めた。
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