第二夜 絡みゆく運命

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「ではティルア、俺は戻る。  戻ったらアスティスに叱られるといい……じゃあな」 「あ、うん」  ギルバードのおかしな様子に気付くも、現れたハムレットと隣に立つ者の姿に続く思考は中断される。 「お前があのティルア姫だったとはな!  まんまと騙された俺様も俺様だが、よくもこのような……!」 「ハムレット様、すみません。  戻ったらきちんと叱られますので」 「……ティルア、そっちの頬、血が――」  遠慮がちに伸ばしたレンの手がティルアの頬に触れる。 「あ、ああ、これか。  大丈夫、かすり傷だから」  思い出したようにティルアが傷口にぱっと触れるも、もう凝固してしまっていた。 「アスティスに殺されないといいな、俺様……」 「大丈夫です、たぶん……」  自信なく二人がそう言ってティルアを戻るように促したその時。 「ティルア様、万歳!」 「ティルア姫、ありがとう!!」 「ラズベリア王女、万歳!!」  群衆から大きな歓声とティルアコールが巻き起こった。  人質として捕まっていた者、その家族、通りすがりの者や事態を聞き付けて集まった者――  彼らはティルアの行いを目の当たりにして、感動し、みな拍手を送り続ける。 「おおぉ、何だ、何だこれは……」  民の大歓声と拍手とに見送られ、ティルアはハムレット、レンと共に城へと戻る。  ティルアの心は複雑だった。  アスティスへの気持ちにまだ整理がついていなかった。  そして、もう一つ――。 『私とアスティスとの関係が聞きたいのでしたら、手が空く時間にでも大聖堂の懺悔室に来てください』  ラサヴェルの言葉。  ティルアの心を見透かすようなアスティスとは違ったブルーの眼差しがティルアの心を乱していた。  (次巻へ続く)
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