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一つ咳払いをした後、健に問いかける。
「何だか不安そうに見えるが・・・。彼らは事情を知っているのか?」
「大まかには。」
「大まかって・・・。そういえば律と実里は?」
「律も実里は最後の二人を捜しに出かけている。」
健と話しながら彼らの様子を窺うが、どう考えても理解している雰囲気ではない。
『おいおいおいおい。』
これは・・・、完全に貧乏くじを引いてしまったらしい。
昔からこの兄弟と関わると、何故か尻拭いする側に回ることが多い。
脳裏を過るのは学生の頃に一緒に行った花火大会、イギリスでのホームステイと言うの名の襲来、健の暴力事件・・・。
その度に感じた眩暈に近い感覚に襲われながら、もう一度ため息を吐く。
それから自分を立て直すと、胸元のポケットから名刺入れを取り出す。すると一番の年長と思われるサラリーマンが、すぐに反応を示した。
その男性はさっと名刺を取り出すと、すぐに渡してくる。
「初めまして。松尾と申します。」
「初めまして。この度は甥っ子どもが迷惑をおかけして申し訳ありません。」
頭を下げると、松尾さんは苦笑する。
「いえいえ。所で、何故ここに連れてこられたか教えてもらいたいのですが。」
「勿論。と言いたいところですが、そもそも報道についてご存知ですかね?」
松尾は首を横に振る。視線を巡らせると、若いサラリーマンは首を縦に、学生は首を横に振っていた。
「ではまずニュースでも見ましょう。」
健に視線を送ると、健はテレビのリモコンを操作する。ちょうどタイミング良く、卓のニュースが流れていた。
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