第1章

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夜が明ける前に逃げなきゃ。 なるべく遠くに逃げなきゃ、捕まったら又、あの何もない部屋に戻されてしまう。 アタシは裸足のまま、無我夢中で山中を闇雲に走った。 どっちに行けば良いかなんて、分からない。 ただソコにだけは、戻りたくないと、全力で走った。 でもダメ、もう足が動かない。 アタシは大木にもたれ掛かり、滑るように座り込む。 月と樹の影に隠れる。 何ヵ月もずっと寝てばかり居たせいで、情けない程に体力も落ちちゃってる。 動いてよ、足! 悔しくて泣きながら、伸ばした足を叩いた。 その伸ばした足に、気配も無く影が重なる いつの間に? アタシ……捕まった!? 嫌だ! 『もう、ほっといて!死んでも良い、病院には戻りたくないの!』 泣き声混じりに叫んだ。 『どうされましたか?こんな夜更けに、若いお嬢さんが。』 ……人違い? 星の還しに照らされた、その人は 黒尽くめのタキシードを着た、大きな紳士だった。 ただ、気になる事が一つ。 紳士の口元には 2本の長い牙が伸びていた。 .
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