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「頑張ったよな? 俺」
華依の前で自慢してやる。
俺がいなかったらきっとふたりはすれ違ってたままだったはずだ。
「最後は強引だったけどさ、俺、ちょっとくらい華依の代わりになれたよな?」
何度聞いても華依からの答えはない。
ってか、華依の代わりなんてなれるはずないか。
だって俺は、純粋にムカついて流星を殴っただけだ。その理由だって――。
「でもさ、華依。俺、失恋したみたいだ」
頑張ったのに、華依との約束を守ったのに、
充実感より喪失感の方が大きいなんて。
「華依、こうなること分かって約束させたんだろ?」
なんて、ただのいいがかり。
「ってか、キョーダイ喧嘩くらいさせろよ、姉ちゃん――」
褒めてもくれなければ、愚痴も聞いてくれないし、喧嘩も出来ない。
人が死ぬっていうのはこういうことなんだ。
そんなの、知りたくもなかったけど……。
「大丈夫、ちゃんと明日から幼なじみやるからさ」
俯いてそう零すと、風が吹いて足元に白い花びらが飛んできた。
「姉ちゃん……」
俺も探すよ。
俺のそばに居てくれる誰かを――。
【END】
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