勇者様はデートがしたい

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   カウンターに額を打ち付け、何やらぶつぶつと呟き始める。  背中に茸≪きのこ≫を生やしそうなその姿に、私は暫し逡巡した。  励ますべきか、張り飛ばすべきか。  悩みながらも、恐る恐る手を差し延べた。 「俺は決めたぞ!」  しかし直後かばりと顔を上げたクリス・チカンゲルさんによって、私の手は止められる。 「俺はこれから、貧乳と小尻に生きる事にする!」 「ソウデスカ」  復活早っ!  五秒も悩んでいないんじゃないか?  人生、もう少し悩みながら生きて行った方がいいぞ?  内心ドン引きしながら、曖昧に微笑んでおいた。  そして直ぐ様、表情を引き締める。 「しかしですね、クリス・チカンゲルさん」 「クリストファー・フリューゲルだ」  すかさず入れられた訂正にも、曖昧笑いで流しておいた。 「初対面の女性の、胸や臀部を触るのは感心しません」 「初対面じゃなければいいのか?」  誰かこいつを何とかしてくれ。  厳しい表情で促した忠告にも、私以上の厳しい顔つきで有り得ない答えが返されて来る。  心が禿げそう。  頭髪ではなく、心の髪が禿げそうだ。 「そうではなくて……触ってはいけません」 「触らずにどうやって確かめればいいんだ?」  誰か……!  誰か助けて!
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