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そして深々と嘆息を零した。
「いいですか、クリス・ゲルさん」
「クリストファー・フリューゲルだ」
いや、お前の名前なんかどうでもいいわ。
むしろただの痴漢でいい。
「結婚に必要なのは、胸の大きさや臀部の柔らかさではありません」
「いや、俺にはそれが全てだ」
どんだけ?!
即答されて、私はぎょっと目を剥いた。
そこまではっきり明言されると、いっそ天晴れ≪あっぱれ≫という気持ちになる。
しかし、だ。
「肉体は年齢と共に衰えて行きますよ?」
「――――?!」
お返しとばかりに放ったこの言葉によって、今度はクリス・ゲルさんが目を剥く事になった。
ひゅっと音をたてて息を飲んだかと思うと、やがてわなわなと震え始める。
「――確かに! チチもケツも、やがて重力の野郎には負けて行く……奴には誰も逆らえない!」
「――――」
重力の野郎って何だよ?
何でここに来て擬人化するんだよ。
私は目を眇めて、眼前の残念な美青年を眺め遣る。
彼は無念とばかりにがっくりと、カウンターの上に崩れ落ちた。
「もう駄目だ。俺はこの先――何を希望に生きて行けばいいんだ……?!」
えぇっ?
そこまで落ち込むか?
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