第六話

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「…………どうすっかな。」 広田は困惑気味に、ポツリと呟く。 自分で出した答えに、どう対処したらいいのか分からないんだろう。 俺はお前が好きで お前は、好きじゃないけど離れたくない。 言葉にすればこれだけの事なのに、その意味は計り知れないぐらい難しい。 数十分後。 「………俺は…………もう、側にはいられない。」 「だから、それは無理っつってんじゃん。」 「側にいるのも無理。」 「何で無理なわけ?」 「っ……俺がお前を好きだからに決まってんだろ!」 このやり取りを、一体何回しただろうか。 一向に交わることのない会話に、いつの間にか俺の涙もぴたりと止まってしまっている。 つか、人に好き好き連呼させるな。 新手のイジメか!? 「あーもう、埒明かねぇなぁ!譲歩しようとか思わねぇのかよ!」 「それを言うならお前もだろ!?大体な、俺は側にいるのがもう限界だったんだよ。無理!絶対無理!」 「それは隠れてコソコソ想ってたからだろ!?堂々と想えばいいじゃねぇか!何なら俺をおとす覚悟で臨んで来い!」 はあ!? はああぁああああ!?? 余りにも自分勝手な言い分に、いい加減フツフツと怒りが込み上げてくる。 「てんめぇなあ!男好きになれる確証あんのかよ!? 無駄に人の心弄んでポイ捨てするような奴は、こっちから願い下げなんだよ!!ふざけんな!」 「ふざけてねぇわ!!大体、絶対好きにならねぇ確証もねぇだろ!? チャレンジする前から諦めるその精神、どうにかしろよてめぇ!!」 だめだ。 マジでもう、どこまで行っても平行線だ。 「お前、言ってることめちゃくちゃなんだよ、もう………普通に考えろよ、男相手だぞ? 女相手にするのとは全然違うんだよ。世間一般から見て、男は異常なの!だからお前には無理!!」 この俺の言葉に、広田の顔色が変わった。 心底怒った、目。 なに これ以上ややこしくする気かよ、お前。
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