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一瞬だけ、また夫の表情が曇った。
あまりにも私が平然と答えるからだ。
当たり前じゃないの。
なんで、私があんたなんかと…。
自分の事を、これ以上犠牲にしたくない。
「…そっか。まぁね、確かにパートも長時間にして貰ったばっかりだからね」
それだけじゃないけどね。
私には、ここで。
永田さんを探さなくちゃならないの。
万が一を、私はずっと願ってるんだから。
こんな奴に、何が悲しくて着いて行くもんですか。
「そうなると、ここの家賃と新しい先の家賃を払わなくちゃならなくなるなぁ。一度、上司に相談してみるよ」
「もし、嫌なら考えが一つあるよ…」
私は思い切って言う。
「離婚して、他人になるって手があるよ」
とりあえず、最初は空笑顔でそう切り出してみた。
「なぁにを言ってんだよ、ワッハッハ!(笑)」
浮かれているから、本気にもなれないのか。
「……」
「だったら、そこまでしなくても、実家に戻るなりすればいいじゃない?」
「実家には戻るつもりはない。パートもあるし…。私はこの街が好きだから、やっと住み慣れた、この街から離れたくない…わがまま言ってごめんなさい…」
確かに、私のわがままだ。
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