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「もう。いい。ご利益、私が独り占めにするから」
樹里は私と遠藤の手から野口英世だけ抜き取った。
「あ。樹里ちがうって。ご利益はともかく私、トキの絵、好きだからいるいる」
そう言って樹里の手から取り戻すと、遠藤も一枚引っ張った。
「俺は藁にもすがらなきゃいけないから、いる! マジで赤点と補習はごめんだ」
「遠藤の場合、赤点と補習どころか、留年の可能性もありそう」
「うわ。小早川、それ言う?」
マジでヤバい! と頭を抱えた遠藤を見て、みんなで笑った。
学校にいる時は笑えた。必要以上に笑っていたかもしれない。ここで笑えなくなくなったら、私はおしまいだと思ってた。
かろうじて投げやりにならずに済んだのは、笑えていたからだ。
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