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「何だよ。何で夏休みに学校行かなくちゃならないんだよ」
「いやー、話せば長くなるから通話料金のためにも直接話そう。いいから学校に」
「行かねぇよこんな朝早く」
「そうか、分かった」
「分かったならいい。切るぞ」
「じゃ、ソファで寝てる一歌ちゃんにもよろしく言っといてくれ」
「おう……は?」
通話が切れる。
思わず、俺は後ろを振り返り一歌を見た。
相変わらずの間抜け可愛い寝顔で、よだれと左腕と左足をだらりと垂らしながら、ソファで眠っている。
もう一度外へ振り向くと、庭を囲う塀の隙間から通行人と目が合った。
「あっれー、赤坂くんじゃん。奇遇だなー、こんなとこで会うなんて」
「朝っぱらから人んちまで来といて何言ってやがる」
携帯電話片手にこちらを覗きこんでいた変質者に白い眼を向けてから、俺はリビングの窓とカーテンを閉め、冷房を入れた。
そして玄関から出直すと、待ち構えていた早坂ともう一度出くわす。
「何やってんのお前」
「よっ、おはようシスコン番長」
ランニングでもしていたのか、汗にまみれたランニングウェア姿で、早坂は爽やかに笑った。
「いや、それがいろいろあってさ。俺も日課の早朝ランニング中にいきなり言われたもんだからさ。とりあえず、汗だくで話すのもアレだからシャワー借りていい?いつも一歌ちゃんが使ってる風呂場を」
「断る!」
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