第八話 巌流島

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  「断るなよ!じゃああれだかんな!①シャワー貸す②一歌ちゃんの寝顔の写メ撮ってきて俺にデータくれる③一歌ちゃんのメアド教える④俺と一緒に学校行く、の4択だかんな!」 「くっ、選択肢多いな。じゃあ……一番楽なのは4番か」 「ハイ決定!じゃあ7時にチャリ小屋集合な!約束だかんな!」 あ、あれ。 「約束、したからな。来いよ?」 「お、おう……?」 「じゃ、俺は帰ってシャワー浴びて着替えるから。あ、ちゃんと制服で来いよ?じゃあな、一歌ちゃんによろしくっ」 俺とのテンションの差が違い過ぎる早坂に気圧されるように、俺は家に戻って支度を始めた。 よく考えたら、⑤眠いし予定もあるので寝る、の1択だったことに気がついたのは、歯を磨いて着替えを済ませた後のことだった。 *** 台風一過。 今日の天気はまさにそれだった。 天気予報にも窓の外にも目をくれずひたすら画面ばかり見ていた俺は、台風が来ていたことすら知らなかった。 昨夜直撃した台風による爪痕は、木がそれなりに多く存在する学校という施設には、実に顕著に残されていた。 校庭は荒れ放題。 体育館や武道場、一部校舎の窓は割れ、当然その中も水浸し。 俺の知らないところでバレー部設立のために本気で学校側に働きかけていたため、一年生にして生徒会関係にコネクションを持っていた早坂が、生徒会長から召集を受けたというわけだった。
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