第1話 亜人戦争

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 その昔、人間はエルフの子供であった。  と言っても、本当の親子という訳ではない、その関係性において、親子のようだったということだ。  人間がやっと、人間と言っても良いくらいの進化を遂げた頃。大した肉体的武器も無く、身体能力も低い人間は、肉食獣に怯え、明日の食べ物のあても無く、寒さに震える弱い存在だった。    エルフの王エルフスタンは、草原に暮らす人間達に知性の片鱗を感じ、ドワーフや翼人、他の種族同様に人間を知性化する事にした。  エルフスタンは人間達に言葉を教え、炎を教え、道具の作り方、使い方を教え、薬の作り方を教え、魔法を教えた。  人間達は凄まじい早さでそれらを吸収していった。  エルフと容姿が似ていることもあり、エルフスタンは人間を我が子のように可愛がった。  しかし、子供はいつまでも子供ではない。  人間は教わったことを独自に発展させた。音楽や芸術が発展した一方、エルフから教わったモノは、ほとんどが戦いに使われるように発展した。  言葉は欺くために、炎は焼き払うために、道具は武器に、薬は毒に、魔法は大量殺戮ツールに変わっていった。  人間の数は爆発的に増え、人間は大陸に線を引き、そこを国と称した。  大陸を我が物顔で闊歩し、戦争を繰り返す人間に苦言を呈するエルフも居たが、エルフスタンがとりなした。それすら、エルフスタンにしてみれば可愛いことなのだった。  やがて人間の世界では、権力者達の間で石造建築がブームとなる。  それまで人間はエルフに一目置いていて、アトラスの森に踏み入ることはなかったが、翼人の住む岩場で良質な石が採れることがわかり、開発の手が及んだ。  そこで、翼人との小競り合いが起こった。
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