お父さんの裏側

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それは納得できる。他にも似たような死体を見てきているからだ。けれども、もしそうであるなら、この男は死ぬまでの間、切り傷や打ち身が体中につく間、なぜ裸でいたのか、その理由がわからない。 この死体が、若い女であるなら納得もしよう。目的は、自ずとはっきりする。けれども、この死体は年齢は30代半ばの男だ。その肉付きからも、それが十分に伺える。 だから、なぜとしか言えなかった。 「何か、何か身元を確認できるものはないのか?」 刑事とおぼしき人物が、交番の巡査に聞いた。 「それが・・・この通りパンツ一枚履いてませんので。一応、この死体の上がった近辺は捜索させてますが、それこそ砂漠に落ちた針を探すようなものでして・・・」 巡査はすでに諦めていた。それが刑事には気に入らなかった。だから、それとなく嫌味な発言をした。 「いいですね。この街は本当に平和なようだ。それなら、その歳になっても巡査のままでもいいと思うかも知れませんね」 刑事は40代はじめ、巡査は50代半ば、大きく巡査は年上であるが、この出世欲にまみれた顔をしている刑事の方が、頬がこけ、年上に見えた。 「その通りですね。もう、歳も歳だ。出世よりものんびりと暮らすのが一番ですよ」 巡査は言葉通りに受け取り、嫌味とはいっさい捉えなかった。となると、刑事は正直に言うしかない。 「どんな事をしてもね、身元を確認できるものを探してください。いいですね」 「はい」 巡査は力なく答えた。
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