8655人が本棚に入れています
本棚に追加
/722ページ
ヒナは書類を全部封筒に入れ、荷物もバックに詰め直すと立ち上がった。
「帰らなきゃ」
ここがどこだか分からない。
でも、絶対タクシーくらいは捕まるはず。
人が少なくったって、一人くらいここに住んでる人が居てもおかしくない。
来る途中、他にも家はたくさんあった。
最悪、電話を借りて怒られるの覚悟でヒロキに電話したっていい。
「……怒ってる、かな?」
多分、いや、絶対怒ってる。
でも仕方ない。
何度だって謝ろう。
呆れながらも「もう、いいよ」って言ってくれるまで。
ヒナは玄関の鍵をガチャリと開けドアノブを回し押した。
「っ、……あれ?」
開かれるはずのドアは、びくともしない。
「なんで…………、あっ!」
この部屋にはいるとき、梓は鍵を2つ開けた。
ドアノブの鍵穴と、もう一つ。
上側に差し込まれた鍵。
あれはよく賃貸物件なんかに付けられた外から付けられる鍵だ。
それは中からはどうしようもなく……。
最初のコメントを投稿しよう!