A bargaining point

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ヒナは書類を全部封筒に入れ、荷物もバックに詰め直すと立ち上がった。 「帰らなきゃ」 ここがどこだか分からない。 でも、絶対タクシーくらいは捕まるはず。 人が少なくったって、一人くらいここに住んでる人が居てもおかしくない。 来る途中、他にも家はたくさんあった。 最悪、電話を借りて怒られるの覚悟でヒロキに電話したっていい。 「……怒ってる、かな?」 多分、いや、絶対怒ってる。 でも仕方ない。 何度だって謝ろう。 呆れながらも「もう、いいよ」って言ってくれるまで。 ヒナは玄関の鍵をガチャリと開けドアノブを回し押した。 「っ、……あれ?」 開かれるはずのドアは、びくともしない。 「なんで…………、あっ!」 この部屋にはいるとき、梓は鍵を2つ開けた。 ドアノブの鍵穴と、もう一つ。 上側に差し込まれた鍵。 あれはよく賃貸物件なんかに付けられた外から付けられる鍵だ。 それは中からはどうしようもなく……。
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