私達の選択

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  「え、えっと。研修!そう、研修はどうだった?」 「あぁ。人が減ってました」 「あ、やっぱり。私達の時なんて、半分に減ってたわよ」 ねぇ?と、話を雄一に振ろうとして、思いとどまった。 確実に、藤谷くんの機嫌を悪化させる。 それに、綾瀬さんの機嫌も悪化させかねない気がする。    「じゃ、私帰るね?雄一」 「あ、あぁ」 言い訳中の雄一に別れを告げて、藤谷くんの腕を掴む。 出て行く途中、少しだけ様子を窺えば、 あぁ、アレか。 柔らかい表情、って。 「ラブラブ」 「え?」 「雄一と綾瀬さん」 何か、可愛い。 やっぱり、あの二人はバランスとれてる。 一緒に居て、自然。 「彩夏さん?」 「んー」 空を眺めながら歩く私の後を、藤谷くんが付いて来る。 「話、聞いてくれます?」 「話?」 「先に、俺の話、聞いて下さい」 ポツリポツリ言葉を零す藤谷くんに、視線を向ける。 「今日、あのまま出てきて、すっげぇ後悔してるんですよね?俺」 「後悔?」 「研修だって事、思いっきり忘れてたし。先輩、めっちゃ朝冷静だったし?」 あ、先輩に呼び方戻ってる。 「冷静な分、きっと今日一日、イロイロ考えるんだろーな。って」 相変わらず、鋭いな。この子。 「携帯繋がらないし、」 「あー、ごめん。充電切れてたみたいで」 「しかも、伊藤先輩に何か口説かれてるし、」 「や、アレは単に私と藤谷くんで遊んでるだけだから」 「きっと、先輩の事だから、やっぱり年齢差とか考えると、踏み止まる。とか言ってそうだし」 「藤谷くん、どっかで盗聴してた??」 そのままズバリじゃない! 「やっぱり」 「え?ちょ、藤谷くん??」 不意にその場にしゃがみ込む藤谷くん。 人通りの少ない道とは言え、道の真ん中に座り込んじゃマズイんじゃ。 「藤谷く、……っひゃ!!」 突然、腕を掴まれて引き寄せられる。 「え?ちょ、藤谷くん?」 「先輩、」 「は、はい?」 ちょ、顔が近い! 顔が近いよ?藤谷くんっ!! 「先輩、俺の事、好きですよね?」 …………、そー言えば。 この言葉から始まったのよね。 「先輩?」 「……うん。好き」 そして、こう答えた。 随分と、意味合いが変わってしまったけど。 「じゃ、ソレでいいです」 「え?」 ふと、今度は立ち上がって先を歩く。 だから、その後を付いていく。 「俺は先輩が好きで、先輩は俺を好き」 「うん?」 「ソレでいいです」  
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