第1章

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9. ラウンド2 学生の頃の思い出が詰まっている井の頭公園をしげちゃんと手をつなぎながらゆっくり歩いている。 16歳の年の差があるこのカップルは周りからは一体どのように見えているのだろう。 しげちゃんのこの手の温もり、ちょっと出ているお腹、包み込むような優しい眼差し、私はしげちゃんの全てを愛している。 私は腕時計に目をやって、歩き疲れたから休憩しようと言って駅前の喫茶店に入った。 窓際には、ヒトミが座っていた。 私は、ゆっくりヒトミに近付いていく。 しげちゃんは、硬直したまま入り口付近に突っ立っていた。 「お待たせしてしまって申し訳ありません。」 「いえ、今来た所ですから。」 しげちゃんの顔は緊張のあまり引きつっていたが、少しずつこの現実を受け入れ、悟ったようだった。 「こうゆう事なので。」 私はしげちゃんに優しく微笑みながら言った。 「うん。」 私は、アイスコーヒーを、しげちゃんはホットコーヒーを注文した。 「ヒトミさん、この度は本当に申し訳ありませんでした。私は、大重さんが妻子持ちである事を知りながら、関係を断つ事が出来ませんでした。私の精神的な弱さや甘えが原因です。大変申し訳ありませんでした。」 私はヒトミに頭を下げた。 「…………。」 「あなたは?彼女はこう言ってるけど、あなたはどうなの?」 ヒトミがしげちゃんに向けて鋭い目線を向けた。 「……全部、俺が悪い。俺が声を掛けた。俺に責任がある。」 「彼女との事、全て認めるのね?」 「……うん。」 「……そう。お腹の子供の事も認めるのね?」 「え?」 「……もしかして、あなた知らないの?」 「え?」 「マチコさん、今妊娠してるのよ。」 しげちゃんは、あまりのショックで思考が完全に停止状態になっている。 「あの、ヒトミさん、大変申し訳ありませんが、来週の土曜日、同じ時間にお2人でここに来て頂けませんでしょうか?会って頂きたい方がいるんです。」 「……分かりました。」 ヒトミとしげちゃんが先に店を出て、私は窓の外をぼんやりと眺めていた。 私は、今自分のいる世界が夢なのか現実なのか分からなくなりそうだった。 そして、幼馴染である晋一に電話を掛けた。
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