第11章 憤怒の戦乙女リース

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「……あなたに何が分かるのよ」 今まではなかった表情が、リースの顔に現れる。それは『コード・デスパイア』以降、彼女がひた隠しにしてきた本心。 「『魔物だ!真魔だ!』って殺されかけて……逃げたら今度は『人間だ殺せ、戦乙女を許すな』って……!」 「それは……」 「昔、幼馴染の女の子をこの真魔の血のせいで傷つけたことがある」 幼かったリースはまだ力の扱いが苦手で、魔化した手で女の子を傷つけてしまったそうだ。 「その時のあの子の顔を今でも覚えている。そして思ったの。ああ、私は人間じゃない。完全な真魔でもない。じゃあ私は何なの?って」 小さかったリースには重すぎる葛藤だったことだろう。 自身のアイデンティティに、そんな小さな子どもが悩まなければならないなんて。 「だから私は人間も魔物も嫌い。1人で部屋に篭っている方が、私には合ってるし、なにより誰にも迷惑をかけない」 「でもそれじゃ何も変わらないだろう?」 「………!」 「城で俺が力を見せつけた時、さっき魔級魔法を使った時、何処となくお前は寂しそうな目を見せたよな。どうしてだ?」 「それは……」 「俺に同情でもしたか?魔物の王と称され、更には人間離れした魔力を持って魔法を行使する。挙句には1人で世界を旅してるっていうこの状況を」 一歩ずつリースに近づいていく。 不安と思える感情が彼女の瞳によぎった。 「自分と同じで、俺は人間と魔物、どっちつかずの存在。だから近くにいる事を許してもいい、そう思ったのか?」 「……ちがっ……!」 「だったらその考えを俺が変えてやるよ、リース。 俺と一緒に旅に出よう」 「………え?」
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