序章

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思わず聞き返した私は身動きが取れず、男子生徒を追い払うこともできなかった。 彼の名札の色は3年生の学年カラーの赤で、『伊藤』と書いてある。 何気なく目に留まった物だったけど、男子生徒が年上だという事実がわかってしまった。 そうとわかってしまうと、余計に動けない。 抵抗しない私の答えが「イエス」だと勘違いしたのか、伊藤先輩の顔が迫ってくる。 私は、思わずギュッと目を閉じた。 私の初(ファースト)キスは、この人に奪われちゃうんだ…。 抵抗を諦めた私は覚悟を決めた。 うっすら目を開けると、伊藤先輩の顔はすぐ目の前にある。 近づいてくる顔に耐えきれなくて、私は今まで以上に目を閉じた。 直後、唇に温かい感触を覚える。 あぁ、これがキスなんだ――。 ………ん? これが、キス? 私は目を閉じたまま、疑問を抱いた。
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