幸せの前夜

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幸せの前夜

「ねえ、 初めてエッチした時っていくつだったの?」  一戦終わり、 ベッドの上で煙草に火をつけようとした時だった。  さっきまで荒い息をしていた女が不意に聞いてきた。  「いくつだったかな・・・」  思い出す振りをして、 ライターの火を煙草に近づけた。 思い出す必要なんてない。 ハッキリと覚えているからだ。  「男の人は、 初めてってあまり記憶にないの?」  女は上体を起こして、 自分の煙草を取り出した。 僕は持っていたライターで彼女の煙草に火をつけてやった。 ありがと、 と彼女は言い、 深く吸い込んだ。  「そんなことないよ。 あの経験は衝撃的だから。 僕は確か高校を卒業してからだったから18才だな」  正確には大学入学式直前だ。 相手の顔も名前も覚えている。  「そっか、 男の人ならそれは早いのかな?」  今日は久しぶりに兄に会って、 2人で飲んだ。 兄は新居に帰り、 僕は一人暮らしをしているマンションに帰る予定だったが、 もう少し飲みたくてバーに入った。 その店で一人飲んでいた女がいま僕の隣で裸で寝ている。  「どうだろう?高校生の時は経験したって言いふらしていたヤツもいたけど、 僕の友人たちはしてなかったんじゃないかな。
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