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 数メートル先の空中で揺れている小型偵察ヘリコプターは、二手(ふたて)に割れたフラップを胴体から下げている。バスケットボールの名手のパスのように、空中をふわりとこちらに飛んでくるのは、楕円形の金属球だった。たぶん炸薬(さくやく)の詰まった爆弾なのだろう。自分は東園寺(とうえんじ)家のお嬢さまと第2位の皇位継承者を守って、ここで死ぬのだ。名誉の爆死だ。  戦闘中とはいえ、東園寺家の私的な山荘の敷地内だった。進駐官養成高校で亡くなった五十嵐高紀(いがらしたかのり)のように二階級特進はあるのだろうか。死ぬ前に階級のことを考えるなど、偉そうなことをいっても、自分だって欲深いものだ。母親に送られる遺族年金の額が違うのだから、当たり前ではあるのだが。  頭上で東園寺家のVTOL機から空対空ミサイルが放たれた。夏空に白いリボンのような煙を引いて、まっすぐに親機の無人ヘリコプターにむかっていく。
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