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「だ、誰か、何か言ってたの?」
まさか、篠田と二人で消えたのを誰かに見られたとか?
「別に?珍しいなと思って」
「篠田先輩、ひどいですぅー!」
その時、けたたましい声で聞きたくない名前が響いてきた。
思わず目をやると、電話を終えた篠田に通り掛かった管理部の若い女子が媚たっぷりに話しかけている。
「三次会、先輩の隣に行こうと思ってたのにぃ」
どうしてあっちもこっちも新年会の話題なの?
生きた心地がしない。
「美紀、大抵ラストまで付き合うのにさ」
「まあ、もう年だからね」
あちらが気になって会話に身が入らず、つい適当な返事になる。
「篠田先輩、二次会の後どこ行っちゃったんですかぁ?」
「うっ」
打ち間違えた箇所に慌ててカーソルを戻す私の耳に、何か答える篠田の低い声が聞こえてきた。
「キャー!絶対約束ですよぉ?」
……何がキャーだ。何が約束だ。
あんな無表情男、どこがいいの?
あの手の若い女子は男と見たら手当たり次第だ。
なかなか出てこない変換にキーを連打していたけれど苛々の限界が来て、ついに立ち上がった。
「……コーヒー買ってくるわね」
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