θ.雲泥の差

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「…………」 俺は一度大きく深呼吸をしてみる。 まず、落ち着くことが必要だ。 情報がとてつもなく多いわけではないが、俺の知らないところで話が進んでいたことは確かだ。 一度整理すべきだ。 俺が死神の鎌だとして言われていた魔武器『懺黒』は、実はゼウスの神器『アダマスの大鎌』だった。 そして、俺はアテナの生まれ変わりだからアイギスの盾を使うことができる。 そのアイギスの盾はゼウスのもう一つの神器である雷霆を防ぐ唯一の盾である。 アダマスの大鎌、アイギスの盾を持っている俺は、唯一ゼウスを倒しうる存在である。 ということか。 「…………完全に転生した時点で仕組まれてるとしか思えないんだよな」 どんなに馬鹿でも流石に気が付く。 俺が転生させられた理由がゼウスを倒すためであるということに。 「ゼウスの子供で男なら、神々の王を倒しうる存在になるという予言があった」 アリスが俺にいう。 「しかし、生まれる前に妻を飲み込むことで抑えようとした」 飲み込むって…… 人間のスケールでは理解できない。 「子供はゼウスの頭の中ですくすくと成長して」 「最終的に生まれたがアテナだね」 「アテナが女であったために、その予言は効力を失った」 ……で、男である俺はアテナの生まれ変わりとして色々奔走したと。 もしかしてだが、そのために俺は全ての名前などの個人的な情報をなくして一から作り直されたということだろうか。 「理解できた?」 「……したくないけど、色々と心当たりがある」 運命の女神は笑った。 「ま、今は色々混乱してるだろうから続きはまた今度だね」 胸から下げている懐中時計を確認してそう言った。 「とりあえず一か月後にでも会いに行くから、その時までに心を決めておいて、だね」
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