暴走

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教室はどよめいている。 理由は一つ。 俺がIS学園の制服を来て居ないからだ。 「・・・中佐」 眼帯の少女が懐疑心を眼に宿して此方へ歩み寄って来る。 「ボーデヴィッヒ大尉・・・いや、今は少佐だったか。何用だ。簡潔に言え」 隊長の時の呼び方の癖が残っていたので訂正する。ラウラももう少佐なのである。 「はっ!・・・中佐は何故独逸軍の軍服を来ていらっしゃるのかと思いまして、失礼ながら質問させていただきます!」 「自分で考えろ阿呆。・・・と言いたいところなんだがな。今朝、用務員と衝突してしまってな・・・運悪くバケツの水を頭から被ってしまったわけだ。俺は普段着を持ってないからこうして手持ちの軍服を着ている」 水で冷えた体は洗ったから風邪を引くことは無いだろう。 いやしかし、あの時間に用務員が居るとは、随分と仕事熱心である。 「まぁ近々普段着を買うタイミングが出来るだろうから、少佐は気にせずとも良い」 「はっ!これで私は失礼させていただきます」 半ば嬉しそうに去って行くラウラに、心中で溜息を吐く。気疲れだろうか。 「よう、十也」 「む・・・一夏か」 “二番目のIS適性者”織斑一夏とその左後ろに佇んでいるシャルル・デュノア。 「・・・どうしたんだ?」 俺が俺の気を紛らわすために話題でも振ることにしよう。 「一夏は誰と組むか決めたのか?決められなければ抽選らしいが」 そうなれば見ず知らずの相手ともかち合うだろう。見ず知らずの相手と組んだ場合、即興のコンビネーションでは俺には到底勝てない。 「・・・シャルルと組む事にする」 左後ろに居たシャルルの肩を掴み、一夏は己の体の方に寄せた。 「わわわっ!?い、いきなり何するのさ!?」 「あ、悪い」 その言葉に一夏がパッと手を離すと、デュノアが飛び退いた。まだ知られてはないのか。 「・・・やはりか。一番勝率の高そうな組み方だな」 緊張していたのであろう真っ赤な顔で息を吐いているデュノアを一瞥し、今の話し相手である一夏を見据える。 「勝率なんて関係ない。俺とシャルルで十也。お前に勝つ!」 ふ、面白い。やってみせろ。
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