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――……
一方で永倉は原田たちのやり取りを知る由もなく、淡々と話す万里の言葉に耳を傾けていた
「……どこから話せばいいんでしょうね
まず……自分には歳の近い兄がいたんです
とても優秀な……
いつも周囲から期待され、その期待を裏切らない
常に日々の努力を怠らない素晴らしい人でした
自分はそんな兄を尊敬して、憧れて目標にしていました
でも、知らなかったんです
兄にとってそんな期待や羨望の眼差しがただの重荷でしかなかったことに……」
万里が語り出した内容はよくある話
出来のいい息子が両親の期待に答えようと頑張り
妹である万里がそれを目指す
ただ、少し間違っていたのは跡継ぎとして立派に育てたいが故に必死になりすぎた両親
周りから押し寄せられる過大評価
話を聞いていくうちに
現世を知らない永倉でもそれが普通ではないことに気がついた――……
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